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映画評:トリアー『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

この記事の最終更新日:2006年7月30日

(以下の映画評は2005年に別サイトで発表済みの文章をもとに作成しています)


ダンサー・イン・ザ・ダーク
ダンサー・イン・ザ・ダークラース・フォン・トリアー ビョーク カトリーヌ・ドヌーブ

松竹 2001-06-21
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公開時からずっと観ようと思っていて、ようやく観ました。この時期にレビュー書く意義を出すために、同監督の『ドッグヴィル』踏まえた上での評価。

『ドッグヴィル』との共通点。
1、登場人物に性格悪いやつがたくさんいる。口げんかする時の言葉のやり取りで、ものすごく意地悪い皮肉炸裂。(どれだけ人間の醜い部分出せるかは創作者の評価につながる。こんだけ意地汚い人物出せる監督の発想というか意気ごみがすごい)
2、主人公の女性がものすごい悲惨な目にあう。観ていてかわいそうを通り越して、よくまあこんなひどいことさせるなと驚いてしまう。(登場人物に愛着を持ってしまったらできない扱い。客観的、冷静に人物を処理する監督の創作姿勢は素敵)
3、主人公の女性は男に何度も言い寄られるが、恋愛関係を毎回拒否する。彼女たちは恋愛できない危険な状況にある。(幸せになれない悲劇の主人公って王道だけど、ここまで徹底的に拒絶を描かれると、そのストイックさに感服)
4、観る者の反感を呼ぶであろう衝撃的で、救いのない残酷ラスト。

この作品のラストも『ドッグヴィル』並みに大衝撃でした。これだけ映画や小説があれば、物語のパターンなんて使い古されてる、新しい物語なんてないと思うんだけど、こんなひでえストーリー展開できるんだと、驚かされました。トリアー監督はまだまだたくさん物語パターンを生み出してくれそうな予感。

最後の死も残酷だけど、途中の殺人シーンも、なんでそこまで痛めつけるのと思う、やりすぎ感のあるえげつないシーン。まあ実際の殺しってああいうむごいものかもしれないんだけど。

カットをぶつ切りでつなげてスピード感出したり、カメラのぶれを残したままだったり、ゴ・ダールを思わせる撮影手法。技法、脚本ともかっこよくて、斬新で、なんか新しいことしてやろう、本当にすごいもの作ってやろうという創作意欲が伝わってくる。トリアー監督の映画は今後必ず観ます。

ビョークがずば抜けていいし、カトリーヌ・ド・ヌーヴもいいし、星5つ。

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