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古典教養とは

この記事の最終更新日:2006年4月23日

古典教養とは何でしょうか。時代遅れの遺物、もう誰も試みないもの、偏見と無知の堆積物なのでしょうか。

「古典」と「教養」を分けて考えてみましょう。

古典とは、歴史の過程で正統だと認められたもの、いわば伝統の嫡子です。歴史が下した古典作品に対する価値づけが本当に正しいものなのかどうか、現代においては徹底的に懐疑する必要があります。しかしこの場はひとまず、古典のことを伝統的規範と定義しておきましょう。

教養は、英語ではcluture、ドイツ語ではBuldungです。学習して身につければ、本人の発展に価値あるものが教養だと定義しましょう。

私が下した定義上、古典の正当性は、極めて疑わしいものとなります。時代の移り変わりとともに、過去の作品の価値もどんどん変わっていることが、最近の古典研究によって解明されました。

定義上、教養の価値は古典に比べて確固たるもののように見えますが、時代の移り変わりとともに、何が教養とされるのかも変わってきます。ある時代に暮らす人々にとって、優れた文学作品を読むことが、社会で成功を納めるために必須とは言わずも必要な教養だったとしても、時代が移り変われば、ビジネスや株式投資について学ぶ方が社会的成功につながる場合があります。むしろ、実利に関係なく、生活に潤いと優雅さをもたらすものを教養と定義する、芸術的な人もいるでしょう。どちらにしても、何が教養なのか、何を持ってして教養とするかは古典同様に千差万別であり、時代や人ともに変わっていくのです。

移ろいやすく崩れやすい、古典と教養という二つの言葉を組み合わせると、どんなことが起きるのでしょうか。「古典教養」という響きによって私は、現代に生きているなら、ぜひ学んでおくべ人類の優れた遺産という言葉を想起します。古典も教養も千差万別に変転していくのにも関わらず、二つの言葉が合わさって、古典教養となった時、確固とした理想、知的財産、芸術の絶対的成果という肯定的イメージが喚起させるのです。

当然のごとく、古典教養もまた、時代とともに移り変わっていきます。かつては、古典教養として栄光の座についていた作品が、百年先には駄作としてしりぞけられる場合もありえます。不動のようでいて、そんなにも生成変化する古典教養について、何故私はクロニクル、すなわち歴史編纂作業を行なうかというと、変化すればこそ、21世紀の現代、この位置で、古典教養というものを再度位置づける必要があると考えたからです。一度定義づけた古典が、数百年後多くの人に忘れ去られることが予想されても、私は古典をこの日この時にしらしめることでしょう。優れた作品の普及を願う気持ちに変わりません。

古典や教養というものの価値が第二次大戦以降なし崩しになったかのように見えます。しかし、時代変化による古典作品の評価体系変更は、過去に幾度もありました。それでも、現代の変化はここ数百年の内でも最速であり、古典と教養は、はるか彼方に葬り去られたかのように見えます。過去2500年以上積み重ねられてきた人類の知的財産を放棄して、現代だけに身をおいていていいのか、過去から続く道の最先端に立っているという自覚を持たずに生きていていいのかという、私個人の煩悶から、この企画が生れました。

仏頂面でひどく近づき難い印象を持つ古典作品を、現在人類が直面している問題に通じる、極めて現代的な作品として定義づけることが、この企画の目標の一つです。すなわち、もう現代生活には必要ないとして、教養および古典の対象から外された過去の傑作を、現在の生活に通じる教養として再活性化することが狙いです。

決して過去の栄光を懐かしんで作業するわけではありません。過去と現代に同時に身をおきつつ、人類の未来の発展にまで目を向けつつ古典の価値を再活性化させるつもりです。過去と未来に同時に身をおいて生きている時、古典を教養として血肉化したと言えるのでしょう。

古典は過去の遺物でなく、日常の場で毎日実践できるものです。そうしてこそ古典が教養となるのです。このホームページが皆様の自己学習、研鑽の場としてお役に立てることを願っています。

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