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メルヴィル『白鯨』

この記事の最終更新日:2006年5月28日

白鯨 上
白鯨 上ハーマン・メルヴィル 八木 敏雄

岩波書店 2004-08-19

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アメリカ文学最大の作品と呼ばれるものの一つです。まさしく百科全書的大作。物語の進展を無視して、白鯨に関する様々な事について、百科全書的に知識が記述されていきます。アメリカという国が自己を打ち立てようとしたのにあわせて、小説という様式においても、母国であるヨーロッパを離れた、自分たちだけの、新しい知の形を打ち立てようとした意志の表現を『白鯨』に読むことができます。


白鯨に象徴される巨大な自然、人間に襲い来る外敵に対して、ヨブ記を参照しながら、エイハブ船長は対決を挑みます。白鯨は人間に襲い来るようでありながら、人間が白鯨に立ち向かって行くのが現実です。人間は白鯨が住む海という領域に乗り出し、海に住んでいる白鯨を邪魔者として撃破しようとします。エイハブ船長と白鯨との戦いは壮絶で神話的であり、メルヴィルは小説を書くことで何を読者に伝えようとしていたのか、非常に興味深いです。

メルヴィルは今でも多くの現代思想家に取り上げられます。生存時は全く売れなかったメルヴィルの小説が持つ巨大さ、思想的射程は広大です。

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