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『バガヴァッド・ギーター』

この記事の最終更新日:2006年7月9日

バガヴァッド・ギーター
バガヴァッド・ギーター上村 勝彦

岩波書店 1992-03

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インテグラル・ヨーガ―パタンジャリのヨーガ・スートラ Journey into Power: How to Sculpt Your Ideal Body, Free Your True Self,  and Transform Your Life With Yoga ウパニシャッド インド神話―マハーバーラタの神々 聖なる科学―真理の科学的解説

『バガヴァッド・ギーター』はインドの有名な叙事詩『マハーバーラタ』の中でも最も高尚で魅力的な箇所であり、インド文学・哲学の最高峰と言われてきました。キリスト教文化の礎に聖書が、中国文化の礎に論語や老子が、イスラム文化の礎にコーランが、日本文化の礎に源氏物語があるように、インド文化の礎にバガヴァッド・ギーターがあります。サンスクリット語の書物の中で、一番最初に翻訳されるのが、バガヴァッド・ギーターであると言われています。それほど世界中の読者に愛されている人類文化の古典的名著です。

サリンジャーの小説『フラニーとゾーイー』の中に、ギーターからの短い引用があり、興味がわいたので手に取りました。

親族を殺すことになる戦争へ向かうことをためらうアルジェナに向けて、クリシュナが世界の摂理を説きます。クリシュナは、行為の、仕事の結果でなく、行為そのもの、仕事そのものに集中するよう説きます。成功不成功、行為の結果悲劇となるのか、幸福となるのかに思い悩む必要はなく、ただひたすら己に課せられた仕事をこなすこと、これが人の義務だと言われます。

この思想は、インドのカースト制度の維持に貢献しています。バラモンとして生まれた者は、神を信愛することが唯一の生きる目的となりますし、貴族であるクシャトリヤとして生まれたものは、結果にこだわらず、勇ましく戦い、領土を広げることが生きる目的となります。たとえ親族を殺すことになろうとも、親族は死んで終わりでなく、また生まれ変わるのだから、悲哀することはないと語られます。

バラモンの行為は「寂滅、自制、苦行、清浄、忍耐、廉直、理論知と実践知、信仰」であるとされ、クシャトリヤの行為は「勇猛、威光、堅固(沈着)、敏腕、戦闘において退かぬこと、布施、君主の資質」であるとされます。対して第三の階級ヴァイシャの行為は「農業と牧畜と商業」であり、シュードラの行為は「仕えること」となります。現代人のほとんどは経済活動を行なうヴァイシャですが、ヴァイシャがなすべき行為は「農業と牧畜と商業」のみノノ。バラモンやクシャトリヤの行為に比べて、ヴァイシャの行為は質、量ともに見劣りしており、寂しい限りです。当時マハーバーラタを読んだのは、バラモンやクシャトリヤの階級のみであり、商人は叙事詩など読まなかったのでしょう。

もしも作家という仕事がインドのカースト制度の中にあるのならば、作家は仕事の成果に心を煩わされることなく、ただひたすら書き続けることが使命となるのでしょう。自分が書いた文章が幸福をもたらすのか、悲劇をもたらすのかに想いをよせず、ただひたすら、真摯に書くこと。これこそ作家というもののあり方ではないでしょうか。

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