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書評:エピクテトス『要録』

この記事の最終更新日:2006年5月31日

世界の名著 13 キケロ/エピクテトス/マルクス・アウレリウス (13)
世界の名著 13 キケロ/エピクテトス/マルクス・アウレリウ (13)キケロ 鹿野 治助

中央公論新社 1968-08

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いわゆるストア派の哲学を代表する哲学者、エピクテトス。

エピクテトスは『要録』の冒頭、意欲、欲求などを私たちの活動であるものとし、肉体、財産、評判、公職などは、私たちの活動でないものと定義します。私たちの活動であるものは、私たちの権内にあり、誰にも妨げられず自由にできますが、私たちの権内にないものは、もろく、隷属的で、妨げられるもの、他に属するものであると言われます。

ここでいう活動とは、現代語の活動ではなく、アリストテレスが定義した、ギリシア哲学としての活動であると思われます。

欲求と意欲のコントロール。しかし、欲求は捨てられるべきものとして名指されます。

『欲求はさしあたりまったく捨てたまえ。というのは、もしきみが私たちの権内にないもののなにかを欲するならば、必然、きみは不幸にならざるをえないだろうし、また、私たちの権内にあるもののうちで、およそりっぱに欲することのできるかぎりのものは、なにもまだきみの手のとどくところにはないだろうから。だが、意欲と拒否だけはやってみるがいい。しかし、気軽に、控え目に、ゆったりとやるがいい』(p386)

『自分のものでない長所は、なにも自慢せぬがいい』(p387)

所有物でなく、自分の心の気高さを誇ること。精神の鍛錬を志すこと。

『出来事が、きみの好きなように起こることを求めぬがいい、むしろ出来事が起こるように起こることを望みたまえ。そうすれば、きみは落ち着いて暮らせるだろう』(p388)

期待と願望を外界に投影せずに、外界の変化を変化のまま受け入れるというか、気にしないこと。外界は制御できないと覚悟すること。


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