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書評:ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』

この記事の最終更新日:2006年4月23日
千のプラトー―資本主義と分裂症
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ジル ドゥルーズ フェリックス ガタリ Gilles Deleuze

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ドゥルーズは20世紀フランス現代思想の中心人物の一人です。主要概念は「リゾーム、器官なき身体、差異と反復」などなど。共著者のガタリは精神分析医です。二人で書いたのは、「アンチ・オイディプス」、「哲学とは何か」など。

「アンチ・オイディプス」の方が有名ですが、フロイトのオイディプス論を批判した同書を、今読んでもそれほどの感銘は受けません。精神分析理論が一通り批判検証された後、 毎日激変している現代で読んでほしいのは「千のプラトー」の方です。

本文自体は長大ですが、冒頭の論文「リゾーム」だけでも読むことをおすすめします。彼らの語りが持つ独特の味わいが堪能できます。

書き出しからドゥルーズ節炸裂です。

「われわれは『アンチ・オイディプス』を二人で書いた。二人それぞれが数人であったから、それだけでもう多数になっていたわけだ。(…)人がもはや私と言わない地点に到達するのではなく、私と言うか言わないかがもはやまったく重要でないような地点に到達することだ。われわれはもはやわれわれ自身ではない。それぞれが自分なりの同志と知り合うことになる。われわれは援助され、吸いこまれ、多数化されたのである」

複数アイデンティティーが肯定されます。マルチテュードの走りです。

リゾーム論文末尾は有名な「ピンク・パンサーであれ」の呼びかけ。

「スローガンで書くことーーリゾームになり根にはなるな、決して種を植えるな! 蒔くな、突き刺せ! 一にも多にもなるな、多様体であれ! 線を作れ、決して点を作るな! スピードは点を線に変容させる! 速くあれ、たとえ場を動かぬときでも! 幸運の線、ヒップの線、逃走線。あなたのうちに将軍を目覚めさせるな! 正しい観念ではなく、ただ一つでも観念があればいい(ゴダール)。短い観念を持て、地図を作れ、そして写真も素描も作るな! ピンク・パンサーであれ」

「リゾームには始まりも終点もない、いつも中間、もののあいだ、存在のあいだ、間奏曲なのだ」

ゴダール映画のような短く、強烈な言葉の連呼。一般常識から逸脱する弱者、異端者に現代社会を改革する可能性を見いだし、欲望と力を肯定するドゥルーズ&ガタリの思考。

軽いようでいて、超重量級。哲学の歴史に対する深い素養が裏にあります。決して軽々しい入門にはならない本物の思考が執拗に展開されています。

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