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バルト『テクストの快楽』

この記事の最終更新日:2006年5月28日

テクストの快楽
テクストの快楽ロラン・バルト
みすず書房 1977-01

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フランス構造主義において最も華麗で身軽な文体の持ち主バルトは、高速に自己の理論を深めていきます。バルトは戯れ、快楽を称揚しますが、これはデリダ同様、通俗的な戯れ、快楽の称揚ではなく、哲学的な意味で、これらのかつて反価値だったものが称揚されていると考えられます。

十九世紀の哲学は、ドイツ観念論にしても、実存主義にしても、きわめて真面目でストイックでした。決意して人生を社会のために役立てることは、やがて戦争を引き起こします。きわめて真面目に戦うことを、真面目な哲学は食い止められません。

ストイックな価値が戦争の災厄を避けられなかったのだから、戦争に向かうことを奨励する真面目な哲学でなく、戦争なんてめんどくさいことには関わっていられない、世の中もっとましなことがあると主張する、戯れと快楽の哲学の方に眼が向いて当然です。

バルトの文章は実に真似しやすいので、バルトのような似非詩人が徘徊しましたが、バルトには、軽いながらも、古典に対する深い教養が備わっています。ポストモダン思想は、己の思想が持つ必然として、読者の哲学離れを促進しましたが、ポストモダンの思索家たちは、ただ消費の快楽に溺れることなど望んでいたわけでなく、かつての哲学者たちと同様、社会変革の思考を徹底的に進めることを欲していたのです。表面だけをかすっていると、この部分が見えてきませんが。


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