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悪の華 | |
ボードレール 新潮社 1953-10 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連作品 巴里の憂鬱 ランボー詩集 ヴェルレーヌ詩集 地獄の季節 ボードレール詩集 |
近代小説はフローベールの『ボヴァリー夫人』によって決定的に始まり、近代詩はボードレールの『悪の華』によって決定的に始まります。両作品とも同年、1857年に発表され、両作品とも風俗を乱す罪に問われ、裁判沙汰となりました。
『ボヴァリー夫人』を著したフローベールの方は、無罪となりましたが、ボードレールには罰金が課されました。法規範に屈したボードレールは報われないまま亡くなりますが、作品は彼の死後、絶対的な評価を獲得します。
近代詩とは何か。それまでの詩は、社会道徳規範に眼を向けていましたが、近代詩制作においては、詩以外の要素、価値観をとことん排除し、ただ詩的美しさを追求することのみを目的として、純粋な詩が思索されました。詩の詩性を追求する試みは、当然のように社会規範と激突します。ボードレールはとりわけ都会的なうつりゆくもの、一瞬ではかなくなるもの、頽廃的なものに美を見出し、詩を紡ぎます。
近代詩も近代小説も、芸術の自律性を主張しています。芸術のための芸術運動は、モダニズムと呼ばれます。モダニズム芸術運動を支える、フランス語でいうモデルニテの概念を定義づけたのは、ボードレールでした。ボードレールは詩人としてだけでなく、美術批評の分野においても優れた業績を残しており、批評行為において彼の詩論、モデルにての考えが美しく表明されています。ボードレールにおいては、批評もまた詩と等しく重要なのです。
ボードレール批評〈2〉美術批評2・音楽批評 シャルル ボードレール Charles Baudelaire 阿部 良雄 筑摩書房 1999-03 by G-Tools |
モデルニテを理解するための重要な批評として上記書物におさめられた『現代生活の画家』が真っ先にあげられます。モデルニテ、すなわち現代性とは何か。
『彼のめざすところは、、流行(モード)が歴史的なものの裡に含み得る詩的なものを、流行の中から取り出すこと、一時的なものから永遠なものを抽出することなのだ』
『現代性とは、一時的なもの、うつろい易いもの、偶発的なもので、これが芸術の半分をなし、他の半分が、永遠なもの、不易なものである』
『一時的で、うつろい易く、かくも頻々と変貌をとげるこの要素を、あなた方は軽蔑する権利もなければ、これなしですます権利もない。この要素を抹殺するならば、否応なしに、たとえば人類最初の罪以前の唯一の女性の美といったたぐいの、抽象的で捉えどころのない美の、空虚のなかへと落ちこむのほかはない』
現代的なものの中に古典的美しさ、永遠性を感じること。どこにいても、美を見出す詩人。ボードレールの現代性賛美は、ランボー、マラルメといった優れた後続を生み出しますし、プルースト、ナボコフ、ジョイスなど多くの小説家にも多大な影響を与えています。
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