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意志と表象としての世界〈1〉 ショーペンハウアー Arthur Schopenhauer 西尾 幹二 関連作品 意志と表象としての世界〈2〉 意志と表象としての世界〈3〉 幸福について―人生論 読書について 他二篇 知性について 他四篇 by G-Tools |
19世紀初頭絶頂を究めていたヘーゲル哲学に対する鋭い批判を通して、ショーペンハウアーは自己の哲学を確立します。ヘーゲル哲学が世界と歴史に積極的に関わって行く社会派の哲学だとすれば、ショーペンハウアーは社会の営みなどどうでもいい、悲観的な厭世主義の哲学です。ヘーゲルに比べて明快で分かりやすい文体は、多くの読者に受け入れられます。モーパッサン、ヴァーグナーなど芸術家のうちにも、ショーペンハウアーの愛読者は多いです。
対してハイデガーなどは、ショーペンハウアーの哲学を大衆に媚を売っているわかりやすい哲学のまがいものとして批判します。ヘーゲルなどのドイツ哲学の知の営みについていけなくなったから、みなショーペンハウアーのような軽いものに手を伸ばすというハイデガーは、カントに対する誤解によってショーペンハウアーの哲学は成り立っていると考えています。
カントは物の本質の世界、物自体の世界を超感性界と名付け、これを人間は認識できないとしました。カントにとって人間が認識する世界は現象界にすぎず、事物の根底にまでは認識が及ばないことになります。
ショーペンハウアーは現象界を表象界と呼びます。ショーペンハウアーにとって表象界は個々の人間が見るものにすぎず、極めて主観的な世界です。表象されないもの、人間の判断が及ばない物自体の世界は、原意志と呼ばれます。主観的表象の世界にとって見えない原意志は、盲目的にただ生き延びようとする意志です。これは生への意志であり、きわめて利己的な意志です。
現象界、すなわち表象としての世界の深層にあるとされる意志としての世界。カントは物自体の超感性世界は認識できないとしたのですが、ショーペンハウアーは超感性世界を分析しようとします。分析しようとしても認識できないのだから、意志としての世界は不安、絶望、苦悩、危機意識に満ちたものとなります。
ショーペンハウアーは生きる苦悩から解脱する道として、表象と意志の世界から、精神と芸術の世界へ移行することをすすめます。芸術作品を観照し、仏教的な諦念の境地へいたること。ショーペンハウアーは合理的啓蒙主義と東洋哲学の架け橋でもあります。
ショーペンハウアーの意志と不安を中心にすえる哲学は、実存主義の萌芽となりますが、ニーチェは慰めとしての芸術観に強く反発します。いくら意志的にあがいても苦悩が増すばかりというニヒリズムに対して、ニーチェは意志の充溢を説きます。ニーチェにとって芸術はニヒリズムに屈服するものではなく、ニヒリズムを転倒させるものとなります。
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博学のショーペンハウアーは、「読書について」や「知性について」などの随筆で楽しむこともできます。
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